「トリポッド 1」と「ワンピース THE MOVIE 〜オマツリ男爵と秘

▼ジョン・クリストファー著「トリポッド 1 襲来」(ハヤカワ文庫、中原尚哉訳、620円)を読む。児童小説の名作という名前は前から聞いてたけど、モノが見当たらず読めなかったシリーズの復刻新訳版。しかも、この1巻は初訳。というか、元々「トリポッド」は、既にトリポッドが支配する世界を舞台に、その世界に疑問を抱いた子供たちが立ち上がる三部作。この「襲来」は、その前日譚で、地球にトリポッドが襲来した時の物語で、1967年に三部作が発表された後、1988年に発表されたものだそうだ。で、今回の日本での文庫化にあたって、物語を時系列順に並べて、この「襲来」が1巻目となったということらしい。その第一巻。面白い。児童小説の王道というか、こういうのをジュブナイルと呼ぶというか、「子供の本がおもしろい」で俺が提唱した「ストレートにワクワク・ドキドキする物語」としての子供向け小説の傑作。平行する価値観の描写が抜群に上手いから気持ち良く読める。寓意よりも物語、説教よりも心意気、そんな話。徐々に侵略されていく様子の緊迫感も、そこから逃げながら戦う姿勢は崩さない子供たちと、その親の姿も、本当によく書けてて、もはや嫉妬さえ感じる。児童小説は、上手さが面白さを作ることが出来るのも好きな要因。トリポッドの支配が完成する未来を知っている読者に向けて尚、希望溢れるラストが書けるのも凄いと思う。ペシミズムに逃げないで、でもどこか悲愴でもあり、希望もある。こんな理想的なラストシーンを思いつけるものなのだということが、物語を作る人にとっての希望でもあると思う。

トリポッド 1 襲来(ハヤカワ文庫 SF 1493)
ジョン・クリストファー著・中原尚哉訳

出版社 早川書房
発売日 2004.11
価格?? ¥ 651(¥ 620)
ISBN?? 4150114935

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▼色々あったが、まあ、廉を連れて銀座の丸の内TOEI1へ、映画「ワンピース THE MOVIE 〜オマツリ男爵と秘密の島〜」を見に行く。時間ギリギリに行ったけど、当たり前のように入場できる。最初からこっちに行けばよかったんだろうな。映画は、絵が良かった。海の描写が気持ち良い。海賊の話だから、海が気持ち良くないとどうしようもない。話は、まあ、ありがちと言えばありがちだけど、ああいう残留思念ものというか、想いが妄執になっている世界の物語というのは、子供が早い内に体験しておくのには良いかなと思った。物語のパターンは、早めにいっぱい体験すべきだと思うし。「仲間」についてのネタも悪くなかった。ただ、ルフィのチームの特性みたいなものと、オマツリ男爵が仕掛ける罠が、あまり噛み合っていなかったというか、シナリオや演出のルフィ海賊団の把握が浅かったのが残念。だから自分たちで作った「チョビ髭」のようには、レギュラーキャラが有機的に物語に絡めない。特に、サンジとゾロ、ナミとウソップの対立が、普段の喧嘩の域を出てないから、その先の展開に無理が出る。あれは、オマツリ男爵の罠に嵌まっていると見えて、実はいつも通りだから大勢に影響なし、というエピソードに持っていかないと活きない。そこで無理したツケは最後まで引っ張ってしまって、だから感動にも無理がある。そのあたり、原作がそういうの上手過ぎるから、その差が出ちゃうということだろうか。矢の群れのイメージも面白いだけに、それをハネ返すのにもう一アイディア欲しかったし。ちょっとイメージ先行になり過ぎたのか。絵が良いというのはそういうことか。
中国茶本「我流茶」の台割を作る。前に作っていた企画書があって、それはそれで設楽さんにもチェックしてもらって、よく練れたものなのだけど、今回の本は、もう少し俺の単行本色を強めた方が良さそうだし、入れたいネタは多いし、でも軽く作った方が読みやすいし、問題は従来の本からどの程度離れて良いのか、どの程度なら読者はついてくるのかだよなあ、とか、色々考えてたら終わらなかった。
▼テレビ「浜ちゃんと」のゲストが水野美紀で、その大工っぷりが面白かったのだが、中で近所のシマチューで買い物してたんで、おー、シマチューだよ、とか思って見てたらバックで流れてた曲は、T-REXのJEEPSTARだった。T-REXは、結構マイナーな曲も普通に使われてて、人気の根強さを感じる。Solid Gold Easy ActionのカバーもCMになってたなあ。Life is an Elevatorも最近、どっかで使われてた。まあJeepstarもSolid Gold Easy Actionも当時のヒット曲だけど、20th Century BoyとかMetal GrueとかTelegram SamとかGet It Onほどのヒット曲では無いし。