「狐闇」と「妖怪大戦争」

北森鴻「狐闇」講談社文庫、762円)を読む。昨日読んだ「狐罠」に続く、旗師冬狐堂シリーズの長編第二作。他に短編集が二冊出てるのね。それはそれとして、この「狐闇」は、前に読んだ北森鴻「凶笑面」の中の「双死神」とリンクする話で、読んでる最中に思い出したんで、そのエピソードがかぶる部分、つまり、「狐闇」講談社文庫版455ページまで読んで、「双死神」を再読。その後、「狐闇」を最後まで読む、というパターンで読了した。蓮杖那智を巻き込む長編というからには、事件の背景も民俗学的に大袈裟になる必要はあるのだけど、そのせいで、「骨董」という世界からはかなり離れてしまうのはちょっと残念。「税所コレクション」というネタも、生来の不敬者なせいか、あんまり面白くない。アジアに対する日本人の視点の気持ち悪さとかは、まあ俺もあるから、やりたいことも分からないではないけど、青銅鏡はやっぱ「美術」じゃないんだよなあ。「骨董」は「美術」との絡みの危うさを持ってないと素材として面白くならないような気がするのだが。つーても、このオールスター小説みたいなサービスは好きだし、小説としては楽しく読める。ただ、ミステリでもコンゲームでも無い、冒険小説になってるのが不満と言えば不満。「狐罠」程度の軽いのでいいから、ミステリ的な仕掛けも欲しかったなあ。

狐闇
狐闇
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.21
北森 鴻
講談社 (2005.5)
通常2〜3日以内に発送します。


凶笑面
凶笑面
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.21
北森 鴻
新潮社 (2003.2)
通常2〜3日以内に発送します。

荒俣宏妖怪大戦争角川書店、1600円)を読む。8月公開の映画「妖怪大戦争」の原作本。良いよ、これ。妖怪小説で、冒険小説で、何より子供に読ませるための、ジュブナイルとしてきちんと書かれているのが良い。文字も大きな活字で組んであるし、ルビも多い(総ルビでないのが残念だけど)。映画も、神木隆之介主演の子供の成長物語になってるみたいだけど、本も、きっちり子供向けに書かれている。それが、本当にきちんと子供向きだから、当然のように面白い。子供向け小説を面白く書くと、大人も面白いというのは、「子供の本がおもしろい」という本で証明してあるのだが、したのは俺なので説得力は無いか。でも本当だ。映画で栗山千明が演じる「アギ」は、読んでいる時のイメージは小池栄子だったのだが。荒俣さんも小池栄子を想定してないか、このキャラ。加藤は微妙に帝都物語の加藤とは違うというか、モテ系なので豊川悦司で良いか。最後の大盆踊りは、ちゃんと映像化できてれば泣けそうだなあ。何にせよ、この映画は廉を連れて行こうと思っている。

妖怪大戦争
妖怪大戦争
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.21
荒俣 宏 / 荒俣 宏〔著〕
角川書店 (2005.5)
通常2〜3日以内に発送します。

▼日経01用の調べモノと、この日記書いてたら、もう朝だ。何やってんだか。溜めちゃダメだな、日記は。